一般課税で消費税を計算している会社では、同じ金額を支払っていても、控除できる税額が減る場合があります。今回は、最新のルールと、経営者が確認しておきたいポイントを解説します。
1. インボイスの「7割控除」とは?
一般課税では、原則として売上げに係る消費税額から、仕入れや経費に係る消費税額を差し引いて納付税額を計算します。この仕組みが「仕入税額控除」です。
インボイス発行事業者以外からの課税仕入れは原則として控除できませんが、一定の帳簿・請求書等を保存することで、一部を控除できる経過措置があります。
以前は令和8年10月から50%になる予定でしたが、令和8年度税制改正により見直され、現在のスケジュールは次のとおりです。
| 課税仕入れを行う期間 | 経過措置による控除割合 |
|---|---|
| 令和5年10月1日~令和8年9月30日 | 80% |
| 令和8年10月1日~令和10年9月30日 | 70% |
| 令和10年10月1日~令和12年9月30日 | 50% |
| 令和12年10月1日~令和13年9月30日 | 30% |
| 令和13年10月1日以後 | この経過措置による控除なし |
ここでいう70%は、支払総額ではなく、仕入税額相当額に対する割合です。
2. 税込11万円の外注費では、どのくらい変わる?
インボイス未登録の外注先へ、10%対象の業務委託料として税込110,000円を支払う場合で比べてみましょう。
仕入税額相当額は、110,000円×10/110=10,000円です。
| 項目 | 80%控除の場合 | 70%控除の場合 |
|---|---|---|
| 支払額 | 110,000円 | 110,000円 |
| 仕入税額相当額 | 10,000円 | 10,000円 |
| 控除できる額 | 8,000円 | 7,000円 |
| 控除できない額 | 2,000円 | 3,000円 |
この例では、控除できる額が1回につき1,000円減少します。同じ取引が毎月続けば、12回分で12,000円の差になります。
※一般課税で経過措置の要件を満たし、課税売上割合等による控除制限がない場合の単純比較です。消費税・地方消費税の合計で示しており、法人税等への影響は含めていません。
3. 経営者が確認したい3つのポイント
① 自社は「一般課税」で計算しているか
今回の変更が納付税額に直接影響するのは、主に実際の仕入れや経費を基に消費税を計算する一般課税の事業者です。
簡易課税や2割特例で計算する場合は、仕入先ごとの控除額を積み上げる仕組みではないため、この変更だけで自社の納付税額が増えるわけではありません。
まずは、自社がどの方法で消費税を計算しているか確認しましょう。
② 対象となる取引を把握しているか
商品仕入れのほか、外注費、広告制作費、事務所・店舗の賃料などにも対象となる取引があります。毎月発生する支出から、相手先の登録状況を確認すると効率的です。
一方、給与など、そもそも課税仕入れに当たらない支出に70%控除を適用することはありません。
また、一定規模以下の事業者が行う税込1万円未満の課税仕入れには、一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除ができる「少額特例」もあります。
少額特例は、基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が、令和11年9月30日までに国内で行う対象取引に適用されます。未登録先への支払いを一律に70%控除とする前に、こちらも確認しましょう。
③ 振込日だけで控除割合を決めていないか
切替えの基準となるのは、原則として課税仕入れを行った時期です。「10月に支払ったから、すべて70%」とは限りません。
| 事例 | 原則的な考え方 |
|---|---|
| 9月に引渡しを受けた商品の代金を10月に支払った | 9月の課税仕入れとして80%控除 |
| 9月に始まった業務が10月にすべて完了した | 役務全体の完了が10月であれば70%控除 |
| 請求書に9月・10月それぞれに引渡しを受けた商品が含まれる | 引渡時期に応じて80%・70%を区分 |
※経過措置の保存要件を満たす場合の例です。家賃や年間保守料などの前払いは、契約内容や短期前払費用の取扱いによって判断が異なるため、個別の確認が必要です。
4. 控除が減った分、取引先への支払いを減らしてもよい?
税負担が変わることと、取引価格を変更できることは別の問題です。
価格の見直しを相談する場合は、実際の負担や相手先の事情を踏まえ、十分に協議することが大切です。
「インボイス未登録だから」という理由で、一方的に値下げを通告したり、合意済みの代金を差し引いたりすることは避けましょう。取引の状況によっては、独占禁止法等の問題となるおそれがあります。
5. 今月の経理で確認しておきたいこと
- 自社の消費税の計算方法を確認する
- 未登録先との継続取引を一覧にする
- 会計ソフトの更新状況と、自動仕訳・定期仕訳の税区分を確認する
- 9月と10月をまたぐ請求書は、取引時期を確認する
- 経過措置の適用が分かる帳簿と、必要事項を満たす請求書等を保存する
特に、毎月の仕訳を複製している場合は、以前の80%控除がそのまま残っていないか確認しておくと安心です。
なお、令和8年10月1日以後に開始する課税期間からは、一の未登録先からの対象仕入れが、その年または事業年度で税込1億円を超える場合、その超える部分には経過措置を適用できません。多額の取引がある場合は、控除割合だけでなく適用上限にも注意しましょう。
まとめ
令和8年10月から、インボイス未登録先からの課税仕入れに係る経過措置は、80%控除から70%控除へ移行しました。
確認したいのは、自社の計算方法、対象となる取引、課税仕入れの時期の3点です。まずは外注費や家賃などの継続取引から、税区分と保存資料を見直してみましょう。
「この支払いは80%と70%のどちらになるのか」「少額特例を使えるのか」「納付税額にどの程度影響するのか」など、判断に迷われる場合は、当事務所までお気軽にご相談ください。
※本記事は令和8年10月14日時点で確認した国税庁等の公表資料に基づき作成しています。
参考資料
