フリーランスや個人事業主として活動していると、一定の段階で「そろそろ法人化した方がいいのでは?」と考えるタイミングが訪れます。
とはいえ、法人化すれば無条件に得をするというわけではありません。節税メリットだけでなく、社会保険、経理手間、信用力、融資、事業ステージなど、総合的に判断する必要があります。
本記事では、「売上・利益」から法人化の目安を逆算する方法を中心に、法人成りの判断基準とメリット・注意点をわかりやすく解説します。
1. 法人化の代表的なメリットとは?
- 節税の可能性が広がる: 所得の分散(役員報酬)、経費計上範囲の拡大、消費税の免税期間など
- 社会的信用が上がる: 取引先や金融機関、求人などで有利に働く
- 決算時期を自由に設定できる: 資金繰りや税対策に柔軟に対応可能
- 資金調達しやすくなる: 融資や補助金申請での書類整備がしやすい
2. 売上・利益で判断する「法人化の目安」
一般的に、下記の基準を超えてきたら法人化を検討する価値があるとされています。
- 年間売上:1,000万円前後(※消費税の免税期間が終了する目安)
- 年間所得(=売上−経費):500万円以上
例えば、個人事業主の所得が500万円を超えると、所得税+住民税+国民健康保険+国民年金で40%近い税負担になるケースもあります。一方、法人では役員報酬+法人税に分けて税金を最適化しやすくなるため、結果的に手取りを増やせる可能性があります。
3. 消費税の免税期間に着目した戦略
新たに法人を設立すると、原則として2期目まで消費税が免除されます(資本金1,000万円未満・特定要件を除く)。
個人事業で売上1,000万円を超えた2年後に消費税課税が始まる前に法人化し、「リセット」するという選択肢もあります(これを“消費税リセット法人”と呼ぶことも)。
ただし、インボイス制度の導入により、免税事業者では仕入控除ができない場合があるため、業種や取引形態に応じて慎重な判断が必要です。
4. 社会保険の義務化にも注意
法人化すると、たとえ役員1人でも社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務となります。
国民健康保険より手厚い一方で、保険料負担は増える傾向があります。毎月のキャッシュフローに影響を及ぼすため、保険料の試算も法人化前に必ず行っておきましょう。
5. 経理・申告の手間は確実に増える
法人になると、決算書・勘定科目内訳書・法人税・地方税など、提出書類の数や記帳の精度が上がります。
会計ソフトや税理士の活用が必須になることが多く、事務負担の増加も含めて判断が必要です。
6. 法人成りを判断する6つのチェックリスト
- ☑ 年間売上が1,000万円を超えそう
- ☑ 所得(利益)が500万円以上
- ☑ 社会保険料の負担にも耐えられる
- ☑ 銀行融資・補助金などを活用していきたい
- ☑ 信用力が必要な業種(取引先が法人を希望)
- ☑ 税理士や会計ソフトの導入が前提でもOK
まとめ:法人化は「節税」だけではない
法人成りは節税対策として非常に有効ですが、それだけを目的にすると後悔することもあります。
社会保険や経理の複雑さ、運転資金への影響も考慮し、自社のフェーズに合ったタイミングを見極めることが重要です。
迷ったときは、実際の数字(売上・所得・将来計画)に基づいて、顧問税理士に相談してみましょう。将来のキャッシュフローまで見据えた“根拠ある判断”が、後悔しない法人成りの第一歩です。