2018.06.14
譲渡所得

マンションを売却した時の税金を実例を使って解説

マンション売却時における税金の計算方法を解説したホームページはよく見かけます。
しかしそれは、不動産投資のマンション売却時を対象としたのが多く、居住用マンション(マイホーム)についてはあまり情報がありません。

ところが、同じマンション売却でも不動産投資用と居住用では税金の計算方法が全く異なります。
そこで、今回は居住用マンションの売却時の税金の計算方法について具体例を用いて解説します。

売却するマンションの具体例

以下の新築マンションを売却した場合における税金の計算方法について見ていきましょう。

・購入額:5,000万円(土地1,500万円:建物3,500万円)
・築年数(=所有期間):30年
・売却額:4,000万円

マンションを売却して利益が発生するとこんな税金が掛かる

そもそもマンションを売却して利益が発生すると税金がかかります。
この利益のことを譲渡所得といい、マンションの売却額から「取得費」と「譲渡費用」を差し引いた残額のことを指します。

・譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)

取得費とは、マンションの購入額から建物部分の使用に伴う価値の減少分を差し引いた金額です。
この価値の減少分のことを「減価償却費」といいます。

減価償却に関してはこちらのページで解説しています↓

不動産税理士執筆!マンション売却時の取得費と減価償却費の計算方法

一方、譲渡経費は売却時の諸経費であり、不動産会社へ支払う仲介手数料などが挙げられます。

また、マンションの譲渡所得は「売却した年の1月1日時点での所有期間」によって、次の2つに区分され、税率が異なります。

・所有期間が5年以内:短期譲渡所得
・所有期間が5年超:長期譲渡所得
それでは、譲渡所得に掛かる税金を紹介します。

 

所得税

譲渡所得に対する所得税です。
税率は短期譲渡所得が一律30%、長期譲渡所得が一律15%となります。

 

住民税

譲渡所得に対する住民税です。
税率は短期譲渡所得が一律9%、長期譲渡所得が一律5%となります。

 

復興特別所得税

復興特別所得税は2037年まで上記の所得税に対して2.1%課税する税金です。
譲渡所得に対する税率に置き換えると次のようになります。
・短期譲渡所得:税率0.63%=所得税率30%×2.1%
・長期譲渡所得:税率0.315%=所得税率15%×2.1%

 

計算実例

マンション売却時の譲渡所得は取得費を求めるための減価償却費の計算がポイントとなります。
そこで、次の手順で計算実例を示しましょう。

 

①減価償却費を計算

そもそも減価償却費は次の算式で計算します。

マンション購入額の建物部分の金額×90%×償却率×経過年数(≒所有期間)

償却率は税法上の使用可能期間である耐用年数により定められています。
マンションはRC(鉄筋コンクリート構造)またはSRC(鉄骨鉄筋コンクリート構造)であるため、耐用年数は70年(不動産投資用の新築マンションの耐用年数47年×1.5倍)、償却率は1.5%です。

具体的な金額は次の通りです。

減価償却費1,417万5,000円=マンション購入額の建物部分の金額3,500万円×90%×1.5%×経過年数(=所有期間)30年

経過年数はマンションの購入日から売却日までの期間のことを指します。
1年未満の端数が生じた場合、6カ月以上は1年とカウントし、6カ月未満は切り捨てます。
たとえば、所有期間が30年6カ月なら経過年数は31年、所有期間が30年5カ月なら経過年数は30年となります。

なお居住用の場合、不動産投資用と違って、購入したマンションが新築か中古でも減価償却費の計算方法は全く同じです。

②譲渡所得を計算

次の手順でマンション売却時の譲渡所得を計算します。

(1)取得費3,582万5,000円=マンションの購入額5,000万円-減価償却費1,417万5,000円
(2)譲渡所得417万5,000円=売却額4,000万円-取得費3,582万5,000円

③税金を計算

マンション売却時の譲渡所得は417万5,000円です。
所有期間が30年のため、長期譲渡所得の税率を用います。

・所得税62万6,250円=譲渡所得417万5,000円×所得税率15%
・住民税20万8,750円=譲渡所得417万5,000円×住民税率5%
・復興特別所得税1万3,151円=譲渡所得417万5,000円×復興特別所得税率0.315%

これら税金の合計額は百円未満を切り捨てた後の金額である84万9,100円となります。

実際は3000万円特別控除あるから税金は掛からない

マンションの売却時に具体例のように84万9,100円の税金がかかるのでは、売却する人が負担するのは大変です。
そこで、3,000万円特別控除という優遇税制が設けられています。

3,000万円特別控除とは、居住用マンションに限り、売却時の税金については「譲渡所得から最大3,000万円まで控除した残額」に対して税率を掛けて計算することが認められます。

上記の計算実例を例にすると、譲渡所得は417万5,000円ですが、3,000万円特別控除が受けられるため、税率を掛ける金額は0円となり、税金が掛かりません。
つまり、居住用マンションの場合、譲渡所得が3,000万円を超えない限り、税金は掛からないのです。

しかし、3,000万円特別控除は確定申告をすることが条件となります。

仮に譲渡所得が「417万5,000円<3,000万円」といって確定申告をしないまま税務署から申告漏れを指摘された場合、84万9,100円の税金が課税されてしまいます。

まとめ

居住用マンションの売却時は譲渡所得が3,000万円を超えない限り、税金は掛かりません。

しかし、3,000万円特別控除の優遇税制を受けるためには、確定申告をすることが条件です。

そのため、「譲渡所得が3,000万円以下だから確定申告をしなくても大丈夫」などの自己判断により、余分な税金を支払う羽目になる可能性があります。

マンションの売却で3,000万円特別控除などの優遇税制を受けるためには、税金に対する正しい知識を身につけましょう。

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